食物繊維のはたらきについて

食物繊維とは

食物繊維は食べ物の中で消化されない部分で、炭水化物の1つです。炭水化物は糖質と食物繊維を合計したもので、栄養成分表示ではそれぞれの分析値(理論値)がある場合、分けて表示することができます。

水溶性食物繊維と不溶性食物繊維

食物繊維には水溶性食物繊維と不溶性食物繊維があります。水溶性食物繊維は煮くずれやすいまたはスジの少ない野菜類(人参、大根、玉葱、トマト、キャベツ、ほうれん草、じゃがいも、さといも、ながいも等)、芋、果物などに多く含まれ、不溶性食物繊維は煮くずれにくいスジの多い野菜類(れんこん、ごぼう、たけのこ、ふき、セロリ、とうもろこし、ブロッコリー、もやし等)、山菜類(ぜり、ぜんまい等)、きのこ類、乾物(切り干し大根、ひじき、干しいも等)、そしてさとうきびに多く含まれています。この2つの食物繊維により、食べ物のカサが増えることで、満腹を感じやすくなるうえ、腹持ちが良くなるというはたらきがあります。また、両者のはたらきには異なる特徴もあります。

水溶性食物繊維のはたらき

水溶性食物繊維は水を含むとゲル状になり、膨らみます。すると、胃が膨張することで、満腹感が増すため、結果として食事量が減る場合があります。さらに、腸内での糖質の吸収を妨げるはたらきもあります。また、水溶性食物繊維は腸内細菌の餌となり、発酵することで、腸内環境が改善します。ただし、水溶性食物繊維を摂りすぎると、発酵により生じる物質が多くなりすぎて腸内を荒らすため、お腹がゆるくなり、下痢をしやすくなるという副作用があります。

不溶性食物繊維のはたらき

不溶性食物繊維も水を含むと膨らみますが、水溶性食物繊維ほどではありません。しかしながら、不溶性食物繊維が多い食べ物は固さが増すため、咀嚼を増やす必要があります。その結果、満腹中枢を刺激して食べる量が減ることが期待できるとともに、顎の筋肉が鍛えられます。加えて、不溶性食物繊維は腸内でほとんど消化されないため、大腸からの排出を促進します。すると、体に吸収されずに排出される糖質が増えるため、肥満の解消が期待できるとともに、毒素の排出も促進されるため、デトックス効果も期待できます。

水溶性食物繊維と不溶性食物繊維のバランス

この2種類の食物繊維は異なるはたらきがあるため、どちらか一つではなく、両方摂ることが大切です。しかしながら、水溶性食物繊維は摂りすぎによる副作用があるため、不溶性食物繊維をより多く摂る方が良いと考えられます。

肥満対策

食物繊維が多い食事は満腹感を感じやすくなるため、食べすぎを防ぐとともに、血糖値やインスリンの上昇を穏やかにするうえ、エネルギーの吸収量も減らすため、肥満対策に効果があると考えられます。食物繊維を多く摂取する人は太りにくいという研究もあります。

糖尿病対策

GI値(グリセミックインデックス)という考え方があります。これは食べ物を食べた後にどれだけ血糖値をあげるかを数値にしたもので、GI値が高い食事は2型糖尿病の発症リスクを上げるという研究があります。しかしながら、GI値が高い食事をしても食物繊維を多く摂れば、2型糖尿病に罹患しにくいという研究結果もあります。

注意が必要なケース

日常的に食物繊維をサプリメントで摂っている慢性的な重度の便秘患者は摂取する食物繊維を減らした方が症状が改善すると研究で報告されています。食物繊維を多く摂ると便のカサが増すため、排泄する力が衰えている場合、逆に腸に溜まってしまい、逆効果になると考えられます。この場合は運動などにより、まずは排泄する力を回復することが必要だと考えられます。

参考文献

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